Fred Herschの自伝とO Grande Amor

ちょこちょこ紹介していますが、Fred Hersch(アメリカのジャズピアニスト)の自伝を最近読み非常に感銘を受けました。

 

Good Things Happen Slowly: A Life In and Out of Jazz

昨年の9月に発売され、英語版しか出ていないのですがKindleだと安かったのと、単語を簡単に調べられるので比較的さくさく読めました。題名の"Good Things Happen Slowly"とは、Herschが病に倒れた際に医者から言われた"Good Things Happen Slowly, but bad things happen fast"という言葉から来ています。

 

私は正直に言うとにわかファンで、コンサートも一回しか行ったことがないし、CDもこれから集めようと思っているところなので、何も偉そうなことは言えません。何よりピアノ弾けないし。けれど、彼が自分の言葉で語った彼の人生は非常に興味深かったし、時にストレートで赤裸々な筆致は、彼が素晴らしいジャズピアニストだということを置いておいても面白い読み物でした(音楽だけでなく文才もあるといふ。。)。

 

物語はHerschがどのような両親の下に育ったか、音楽との馴れ初め、ジャズの世界にどのようにinvolvedされていったか、と多少の前後はあれど年代順に話が進められていきます。著名なジャズミュージシャンとの共演、そして20-30代の頃は様々な仕事をする上でどのように感じたかが彼の正直な言葉で語られていて、本当に面白いです。名前が出てくる大物ミュージシャンの中には、CDを聴いたことのない人もいるので、勉強になります。Herschはインストゥルメンタルであれ、詩の内容を理解して演奏することがとても重要だ、と語っていて、シンガーとも多くの録音を行っています。文章を読んでいても、歌の持つ力を理解しており、dictionに優れたシンガーへのリスペクトが見られます(ここがピアニストからだけでなく、多くのシンガーからも愛される理由なのかも)。詩や小説に対しても造詣が深く、ホイットマンの「草の葉」をベースにした作曲も行ったそうです。

 

後半からは彼の病気のことと、パートナーであるScottとの出会いや関係について、新しい音楽との関係構築についてが語られています。既にたくさんの悲しみを知っているFredが、最愛のパートナーと出会い、幸せに満ちた生活を送るところは本当に泣けてきます。自分がどんな人間であるか、どんな病気を乗り越えて来たか、ということは自分の音楽を聴いてもらう上では関係のない情報だけれど、ジャズというのは個人の音楽を聴いてもらうものであり、自分の人生の経験は全て自分の音楽に表れている。。という様なことを書いていました。

先日のソロコンサートでも弾いてくれたのですが、彼の演奏するJobimの「O Grande Amor(大いなる愛)」という曲がとても好きです。この曲の内容は(私による意訳ですが)「人には必ず運命の人がいる。絶望から逃れるためには、そう信じなくては人は生きていけない。だからどんなことになっても、人は大いなる愛を勝ち取らなくてはならない。そして、多くの悲しみを乗り越えた人にだけ訪れるものなのだ」みたいな歌詞です。聴くたびに泣けてきます。人の人生には、やっぱり愛が必要なのだ、となんだか本と彼の音楽を通して教えてもらったような気持ちになりました。

 

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