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2017年4月9日(日)「椿姫を観てあーだーこーだと語る会」を催しました。

クローズド企画だったのですが、ひょんなことからお知り合いになったせいこさんと「オペラを観ていろいろ感想を言い合う会」というのを開催しました。演目はMETのライブビューイング「椿姫」。演出は有名なヴィリー・デッカーのもの、タイトルロールのソニア・ヨンチェヴァもアルフレード(当社比イケメン)とジェルモン役(10年前よりもお父さん度が増してるし余裕出てきてる)も全員素晴らしかった。

 

最初に決めた開催の趣旨としては

 

・(ほぼ)初めてオペラを観る人のために、リーズナブルにLV(ライブビューイング)でまず観てみる

・前知識全くなしで観るのではなく、多少の予習(あらすじの確認、有名な曲の事前視聴)などを行う

・観た後に皆でざっくばらんに好きなこと語り合う。(これがポイント)

 

みたいな感じで進めていきました。私自身も鑑賞しながら「あー、ここのアリアも予習に入れた方が良かったかなー」とか思いつつ、それなりに予習として提示した動画は自分なりに絞り込めたかなと思いました(独断と偏見だったし、Youtubeの動画あるなしの関係もありましたが)。全部入れるときりがないものね。

あらすじとしては、結構つっこみどころのある話(オペラってそういうの多いけど)だけど、シンプルな演出に乗っかってとにかくメインロールの演技が良かったこと、音楽が素晴らしいことの相乗効果で2幕の中盤(ヴィオレッタが折れてアルフレード別れることを決意するシーン)あたりから私ぼろぼろ涙を流していました。ヨンチェヴァすげえ。音楽であんなに泣いたのは2014年のウィーンフィル鑑賞以来です。

 

あーだこーだと6人で楽しく語った経験は、なかなか言葉だけで上手くまとめることが出来ませんが、お話した内容で印象に残った点を書き出してみます。

 

・シンプルな演出が効果的でキャラクターに注意が向かった。

・この演出は日本的な伝統芸能(文楽)とかの影響を受けてそう。

・群集の中に女性も混じっているが、女性を感じさせないスーツを来ていた。フローラも男性として出ている(?)。他の女性を排除してヴィオレッタを紅一点として扱っていることに怖さを感じた。

・衣装がスーツでの演出の中で、ジプシーや闘牛士のシーンの挿入が唐突に感じられた。

・賭けで買ったお金をわざわざスカートの中につっこむ演出があざとい。

・ヘタレなアルフレード役(台詞とか出番もヴィオレッタに比べて限られてるから)が上手く表現されていた。ただの短絡的なぼんぼんというより、もう少し厚みのあるキャラクターになっていた。

・お父さんも酷い役なのに、どこか憎めないキャラクターに演じられていた。

・アルフレードはヴィオレッタの「人に見せない弱い部分」を好きになったというよりも、いろんな部分をまるごと好きになったのでは。

・「乾杯の歌」で歌ったヴィオレッタの「私は自由に生きるの」というコンセプトはアルフレードと恋に落ちてどこかへ行ってしまったように思えたが、最後の(死ぬ間際に)「私はまた新しく生きるの」というシーンで自立が感じられた。

・一番最初に前奏曲に乗せてヴィオレッタが医師役に倒れこむシーンが挟まっていることで、乾杯のシーンの見方が変わってくる。他の演出よりも、ヴィオレッタの内面や時間へのあせりに焦点を当てている。

 

・オペラとミュージカルの違いって何?

 

下記個人的な感想です。すごい徒然。

 

いやー、「語る会」楽しかったなー。主催の相方さん以外ははじめましての皆様。うまくいかなかったらどうしよう、話も全然盛り上がらなかったらどうしよう、という気持ちを抱えていたのですが、そんなことは杞憂で、自分でも思ってもみなかった感想があったり、「あー、そういう視点すごいなー」ということばかりでした。何よりも楽しんでもらえてたら良いな。

 

オペラってハードルが高い芸術だと思います。当社比でクラシック好きな自分にとっても。長いやつ(ワーグナーものとか)はなかなか手が出せないし、そもそも集中して観られるのかな?と自分でも不安。観る前にあらすじを頭に入れて予習しないと楽しむことは難しいし、やっぱり「知ってる曲を聴きに行く」というスタンスが合っていると思う。ハリウッド映画と違って、オペラは「現代人が1分1秒飽きないように」作られてるわけではない。100年以上前に作られてた台本と作曲された曲を使って演じなければならない。同じ台詞の繰り返しのアリアを10分くらい歌っていたり、会話で話せば済む5分くらいで終わりそうなことを30分くらいあーだこーだ言っていたりする。なんとも愛すべき古典世界の人達よ。そんでもって重要な人が死ぬシーンが一瞬で終わったりするので、「え、ごめん今誰か死んだの?」みたいに逆に展開の速さについていけなかったりしていまいち自分の中で消化しきれずに終わることもある。

 

そんな愛すべき敷居の高さをもつオペラなので、「自分には合わなかった」とか「楽しめなかった」という感想があっても良いと思うのです。今回観た椿姫は親しみやすいし比較的短いし、演者も最高だったので「全然楽しめなかった」という意見はないと思うし、もちろん演目の好みとか、歌手の上手さとか、演出の良し悪しに因るのですが。観てみて、「なんか自分には合わない」でも良いんだよね。でも、素晴らしい作品であれば、合わないなりに何か感じるものはあるはず(完全即興音楽とか聴いた時、聴いてるときは何が何だか分からないんだけど、何か自分が試されてるような気分になって結構好き)。

 

いつも思うのですが、芸術とは観る人がいて初めて完成するものを指すのではないかな。音楽の場合は、或いは聴衆自身も音楽の一部なのです。もしあなたがそのことに気が付いているのならば。日常の理性で説明される整頓された世界から、混沌としたアートや音楽の世界に埋もれることで、私はなんとか生きている気がする。試されているのは自分自身なのだ、と思うとなんだかいつも緊張してしまう。でもそれが生きる糧です。

 

いろんなことをお話してて「大事なのは今目の前で起きていること」なのだと唐突に思った。ネットでたいていの情報は手に入る時代。情報も音楽も、評判も、生き方の助言も。でもそんなのは経験を前にしては大抵どうでも良い(他人にとって)ことで、私たちは自分自身を生きることで何か本当のことを見ることが出来るのかもしれない、と何かある種の救いのように思ったのだった。

 

 

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